チャオプラヤー・ツーリストボートに乗ってワットアルン船着き場へ。暁の寺を観光します。
ワット・アルン
ワット・アルンはチャオプラヤー沿いに佇む大仏塔の姿が有名です。昼の姿も、夕方~夜の姿も美しくて、対岸から眺めながら食事をいただく・・なんていう楽しみ方も人気がある場所です。
ワット・アルンにまつわるうんちく
もともとは「ワット・アコーク」というアユタヤ王朝時代に創建されたフツ~の寺院だったそうですが、トンブリー(ワット・アルンがある地区)を首都として王朝が開かれたときに「ワット・チェーン(夜明けの寺)」に改名。その後ラーマ4世のころに、ヒンドゥー教の暁神アルーナにちなんで、現在の「ワット・アルン(暁の寺)」と名付けられたそうです。
現在ワットプラケオにあるエメラルド仏が、ワットプラケオ創建までのあいだ一時的に安置されていたりと、フツ~だったはずがどんどん有名になっていった寺院です。
日本では特に、三島由紀夫の最後の長編小説「豊饒の海 4部作」の第3巻「暁の寺」に登場するということがよく知られています。輪廻転生をモチーフにしたお話で、第1巻の主人公である日本人男性が、第3巻ではタイ王室の姫に生まれ変わって・・という内容。
観光したあとに読むと「うわ~まさに!」と唸るようなとっても美しい文章です。
近づくにつれて、この塔は無数の赤絵青絵の支那皿を隈なく鏤めているのが知られた。いくつかの階層が欄干に区切られ、一層の欄干は茶、二層は緑、三層は紫紺であった。嵌め込まれた数知れぬ皿は花を象り、あるいは黄の小皿を花心として、そのまわりに皿の花弁がひらいていた。あるいは薄紫の盃を伏せた花心に、錦手の皿の花弁を配したのが、空高くつづいていた。葉は悉く瓦であった。そして頂からは白象たちの鼻が四方へ垂れていた。
塔の重層感、重複感は息苦しいほどであった。色彩と光輝に充ちた高さが、幾重にも刻まれて、頂きに向って細まるさまは、幾重の夢が頭上からのしかかって来るかのようである。すこぶる急な階段の蹴込も隙間なく花紋で埋められ、それぞれの層を浮彫の人面鳥が支えている。一層一層が幾重の夢、幾重の期待、幾重の祈りで押し潰されながら、なお累積し累積して、空へ向って躙り寄って成した極彩色の塔。
メナムの対岸から射し初めた暁の光りを、その百千の皿は百千の小さな鏡面になってすばやくとらえ、巨大な螺旋細工はかしましく輝きだした。この塔は永きに亘って、色彩を以てする暁鐘の役割を果して来たのだった。鳴りひびいて暁に応える色彩。それは、暁と同等の力、同等の重み、同等の破裂感を持つように造られたのだった。引用:「豊饒の海」第三巻 暁の寺(新潮文庫)
まずはチケットの購入
船着き場を降りてすぐのスペースには、ちょっとした屋台が出ていてにぎわっています。
50バーツの入場料を払って、チケットを受け取ります。ここもドレスコードがあるので注意。そのほかの寺院と同様、ショートパンツやダメージジーンズ・過度な露出はNGです。
大仏塔へ
さて入口へ。門番さんにチケットを渡して中へ入ろうとしたら、ニコニコしながらどこかへ行ってしまったので、私だけでなく何人もの観光客が確認なしで入れてしまいました。
えっ、チケット買ったのに・・・。いいのかな・・・ゆるいなあ・・・。
大仏塔の近くまで行くと、思っていたより大きくてびっくり!ボートからもガイドブックでも、いつも引きの画ばかりで見ていたから、もっと小ぶりかと思っていました。
高さは70mほどだそう。ワット・パクナムの大仏塔よりちょっと小さいくらいですね。
2013年~2017年8月までの長期にわたる大規模な補修作業を終えたあと、「白すぎる!」と批判を受けたというこの外観。うーんまあたしかに真っ白。でも、過去の姿を知らない私からすれば、テンションがぐぐぐっと上がるくらいに好みな外観でした!
大して調べずに来たので、ただの白色の塔かともっとシンプルな見た目かと思っていたのに、まさかこんなにかわいらしく彩られてるなんて!すてきな雑貨を眺めるような気分で、うきうきしながら飽きずに細部を眺めていたくなる歴史的建造物とはじめて出会いました。
これらは立体的に描かれた絵・・かと思いきや、なんと陶器の破片がひとつひとつ埋め込まれています!中国美術の影響だそうですが、とんでもなく手が込んでる・・・!
てっぺんまでこの装飾ですから、大仏塔の建造には5年の月日を要したそうです。この細かさ、そりゃ修復も長引くわと思わず納得。
柄はかわいらしい花柄ばかりではありません。こちらのがんばって建物を支えているかのような石像たちは、ハヌマーンというインド神話における猿族の方々。「ラーマキエン物語」という、日本でいう「桃太郎」や「金太郎」みたいな、国民みんなが知る古くからの物語の登場人物なんだそうです。
ガルーダという聖鳥たちなんかも、同じように石像で飾られています。
ここは白い塀で囲まれた小さな広場のようなスペースになっていて、真ん中には大仏塔が、四方には同じデザインの小さいVer.な小仏塔が置かれています。
鬼神がそろい建つ山門
大仏塔の奥には本堂が。本堂の門には2体のヤック(鬼神)がドドーンと立って、勇ましく門番をしています。
大きくて、気合十分ないかつい表情とガニ股。でも柄はかわいらしくて。なんだか・・ちょっと親近感がわく見た目です。
威厳ある本堂
門を進むと本堂が。本堂たるゆえんを見せるように、大きな神殿のような形で威厳がある出たち!
ほかの場所よりもずっとずっときらびやかな装飾が特徴的です。これまたうっとりと吸い込まれてしまうほどに細かい・・・! 本当にきれい。
靴をぬいで階段を数段上ると、ラオスから持ち込まれた本尊 アルン像が安置されています。顔はラマ2世が彫ったもので、台座にはラマ2世の遺骨が納められているそうです。
部屋全体、高い天井の上の上までびっしりと描きつくされた壁画は釈迦の生涯を表したもの。
本堂を囲む回廊には、信者が寄贈したという120体もの金色の仏像が並んでいます。その手前にはちいさいサイズの様々な石造が144体並んでいて、一体一体のポーズや表情がどれもこれも本当にユニーク!
観光終了
ほかにワット・アルンで有名なのはタークシン大王像(トンブリーに王朝を開いた人)ですが、すっかり見忘れたので、私の観光はここでおしまい。
敷地がとっても広いというわけではないので、観光に使う時間は1時間ないくらい?でささっと見終えてしまう場所ですが、私はすごく好きな場所でした!
とにかく陶器で彩られた装飾がかわいくて見飽きない。そもそも寺院に来て「かわいい!」「フォトジェニック!」って感想を抱くこと自体がかなりレアだと思うので、その不思議さも相まってとてもたのしかったです。
ちなみに中に入れる時間は8~18時なので、有名な夜の姿を見るには、クルーズや対岸のレストランから楽しむのがよさそうです。前日の記事に夜の姿の写真を載せたのでよかったら!
観光が終わったら渡し舟に乗って対岸へ
さて、観光を終えたら次はワット・ポーに向かいます。行き方は渡し舟!10~15分間隔で運行しています。チャオプラヤーボートの船着き場は大仏塔の近くでしたが、こちらの船着き場は山門の近く。
すっごく並んで見えますが、列はすいすい進みます。小屋に入って窓口のおばちゃんにお金を渡して、そのまま乗船。
運賃は破格すぎる4バーツ!すこし値上げしたようですがそれでも安い!
「渡し舟」という呼ばれているのでもっと手漕ぎボートみたいなのを想像していたんですが、想像よりしっかりしていました。リアデッキというのでしょうか、船の尾の部分に座ることができたので、徐々に小さくなっていくワット・アルンを望みます。
途中で貨物船の通過を待ったりと、のんびりした運航です。ローカル感さが楽しい。
さて、5~10分ほど船に揺れるとター・ティエン船着き場に到着!腹ごしらえをしてからワットポーに向かいましょう~。